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オン・ライン読書会「シャーロック・ホームズを読む」の過去ログ
馬車男


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オン・ライン読書会の『緋色の研究』の過去ログの2ページ目です。 1ページ目はここ。 3ページ目はここ。 4ページ目はここ。
勉強になりました。  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 5月29日(日)20時30分6秒
土屋さん:
書き込みありがとうございます、勉強になりました。タイトルの訳を「習作」にすべきと提言したのは土屋さんなのですね。「小学生のときからずっと引っかかっていた」というのはスゴいですね。確かにピンと来ないタイトルだとは思いましたが、私はそれきりでした。書き込みの中に登場する方がたの顔触れにも驚きます(というよりビビりました)。

 A Study in Scarlet のタイトルが、ホイッスラーの連作のタイトルを踏まえているとは知りませんでした。本文中のほうの "study" は「テキスト上の前後関係から解釈」して「習作」だと確信していましたが、ご紹介頂いた情報から判断すれば、タイトルのほうも「習作」のほうが良さそうですね。それにしても「殆ど無視され、あるいは「論外」と思われた」というのは驚きです。古典的著作の翻訳は、もっとも普及した版が誤訳を伴っていると、そのまま浸透・定着してしまうので厄介ですね。

 ネイティヴ・スピーカーも「研究」派と「習作」派に分かれているというのも非常に興味深い話でした。

○「醜い干からびたコウモリみたいな婆さん」(英語では "a hideous old bat who looks like she's got a cactus lodged up her backside")とMr. ビーンが評した、いわゆる"Whistler's Mother"
 Arrangement in Grey and Black: Portrait of the Painter's Mother
  http://www.mr-whistlers-art.info/art/paintings/portraits/mother.shtml
○ホイッスラーの"Study in XX" とは、たぶんこれらのことでは……。
 TVM 2nd Floor: 19th C. English Concept Art - James Abbott McNeil Whistler
  http://www.tigtail.org/TIG/S_View/TVM/X2/d.English/c.other/whistler/whistler.html

ヤジョウさん:
初めまして。土屋さんの書き込み同様、勉強になりました。「当時インド駐在のイギリス人の間で流行った言い方」ということですが、1907年の英露協商成立までのあいだ、インドの安全保障上の最大の懸案事項は、北西辺境=アフガニスタンあたりでした(ちなみに、キプリングの『キム』(1901)も辺境でのスパイ活動がモチーフです)。A Study in Scarlet という言葉に読者がホイッスラーを連想するように、"I keep a bull pup." という台詞に読者はインドを連想したのでしょうね。

 土屋さんの書き込みもそうですが、このような、同時代感覚についての情報は非常に助かります。ありがとうございます。

○ラドヤード・キプリング(斎藤兆史[訳])『少年キム』(晶文社、1997年)
  http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794963092/moujoulyouku-22/

http://homepage2.nifty.com/MasaruS/Hound/


なるほど。  投稿者: みき。  投稿日: 5月31日(火)20時05分2秒
>土屋様、ヤジョウ様
ありがとうございます。
小学校の頃に初めて読んで以来ブルドック行方不明事件の疑問がとけました。

http://miki-mar.hp.infoseek.co.jp/sh/index.html


7月下旬から本格参入します  投稿者: 土屋朋之  投稿日: 6月 2日(木)21時35分18秒
引越間近で本も殆ど段ボール箱の中。引越が終えると、各種ホームズ全集が本棚に並びますので、本格参入しますね。閑話休題。古書店で新品同様の完訳版ルパン全集(偕成社)を手に入れたので、いずれ「ルパンとホームズは本当に対決したのか」というテーマで研究してみたいと思ってたんですが、ネタを明かしてしまったので、この読書会の中でもやりませんか。


新規参入を歓迎します。  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 6月 4日(土)23時00分42秒
土屋さん:
新規参入を熱烈に歓迎いたします。

 「ルパンとホームズは本当に対決したのか」ですか? 考えてもみませんでした。非常に面白そうです。私も小学生のころ「ルパン対ホームズ」を読んだ気がします(残念ながら内容は憶えていません)。「名探偵たちの事件簿」さんの掲示板でも、「新潮文庫のルパンが限定復刊」「経外典」などルパンについて話題になっていたようです。
 ○名探偵たちの事件簿(掲示板)
   http://www.casebook.jp/bbs01/light.cgi?

 この読書会の第一義的な目的は正典60篇の読破です。したがって、「ルパンとホームズは本当に対決したのか」という課題を読書会にどう連結するかを考える必要があると思います。素人考えとしては、ルパンとホームズの対決の日時を特定し、この時期とその前後のホームズの消息を正典に基づいて確定し対照する方法(年代学的なアプローチ)が思い浮かびます。土屋さんからも何か提案して頂ければ、この読書会の参加者・閲覧者の皆さんからもご意見を頂けるかもしれません。

"study" について
先日話題になった "study" 問題ですが、件のホームズのカッコイイ台詞は皆さんがお持ちの版ではどう訳されているか教えて下さい。

 ちなみに、オールティックの Victorian Studies in Scarlet(『ヴィクトリア朝の緋色の研究』)の "Studies" は「研究」の意味ですね。これはあくまでもオールティックの本のタイトルの話で、正典の解釈とは直接関係ありませんが。
 ○オールティック(村田靖子[訳])『ヴィクトリア朝の緋色の研究』(国書刊行会、1994年)
    http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4336024618/moujoulyouku-22/250-6866722-3255445?creative=161 5&camp=243&link_code=as1

 ○Richard D. Altick, Victorian Studies in Scarlet
    http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0460078836/moujoulyouku-22/250-6866722-3255445?creative=161 5&camp=243&link_code=as1

※おまけ(同じ著者の本でオモシロそうなので。でも高い。)
 ○オールティック( 要田 圭治/田中 孝信 /大嶋 浩 [訳])『ヴィクトリア朝の人と思想』(音羽書房鶴見書店、1998年)
    http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4755302080/moujoulyouku-22/250-6866722-3255445?creative=161 5&camp=243&link_code=as1
   目次
   第1章 一番長い治世―(1837‐1901)
   第2章 ヴィクトリア朝の人々―役者と観衆
   第3章 時代精神―時、場所、変化
   第4章 功利主義の精神
   第5章 福音主義的傾向
   第6章 宗教運動と危機
   第7章 民主主義、産業、文化
   第8章 芸術の特質と社会における芸術の地位
   第9章 評判の向上


ヴァイオリンあれこれ
クラシックに疎いので、お恥ずかしながら初めて知ったのですが、クレモナで作られたヴァイオリンを「クレモナ・ヴァイオリン」と呼び、「ストラディヴァリウス」や「アマティ」はクレモナ・ヴァイオリンの一種なのですね。
◆クレモナ・ヴァイオリン(Cremona fiddles)
  ○クレモナバイオリン cremonaviolin
    http://www.y-m-t.co.jp/cremonaviolin/
◆ストラディヴァリウス(a Stradivarius)
  ○Violin, The Harrison, by Antonio Stradivari, Cremona, 1693
    http://www.usd.edu/smm/Violins/Stradivari3598/3598StradViolin.html
◆アマティ(an Amati)
  ○Violin by Andrea Amati, Cremona, 1574
    http://www.usd.edu/smm/Violins/Amati5260/5260AmatiViolin.html

書籍あれこれ
◆フィリップ・ド・クロイ『国際法規』 Philippe de Croy, De Jure inter Gentes
 Google で "Philippe de Croy" を検索したところ、同名の人物は歴史上に複数存在するようですが、"De Jure inter Gentes" を検索語に追加すると、A Study in Scarlet のテクストしかヒットしないようです。従って、ホームズの言う "Philippe de Croy" という人物を同定できませんでした。架空の人物・書籍でしょうか。ご存知の方はご教示ください。本のタイトルが今後のストーリー展開の伏線ということかもしれません。

◆アンリ・ムルゼ『放浪生活』Henri Murger, Vie de Boheme
 Henri Murger, Scenes de la Vie de Boheme (1851) のことだと思われる。
  ○Henri Murger, Bohemians of the Latin Quarter(英語版)
     http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0812218841/moujoulyouku-22/
  ○Bohemians of the Latin Quarter(オンライン版・英語)
     http://home.swbell.net/worchel/contents.htm
『放浪生活』だと感じが出ませんね。

求む!
ホームズを読むと具体的な地名が度たび出てきますが、便利な「これが良い」という地図があったら教えてください。

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編集済


タイトルの訳し方について  投稿者: Fifty Three  投稿日: 6月 8日(水)12時55分52秒
はじめまして、5月から拝読しております。
《緋色》第1章でホームズは、1リットルの無色の水から赤い血液を沈殿させる。第4章では、無色の糸かせから殺人という緋色の(赤い)糸を抜き出して見せるという。そういうホームズという人物をワトスンは研究し、書いた研究報告書が'A Study in Scarlet'. ですから、この小説のタイトルは「緋色の研究」と訳すべきです。ワトスンがホームズを「習作」したわけではありません。


タイトルの訳は、議論続行ということで。  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 6月 9日(木)21時35分8秒
Fifty Threeさん:
書き込みありがとうございます。ここ最近、初めて書き込んで下さる方が増えて非常に嬉しいです。

 私が、最初にタイトルの訳についてココで発言した時に「ただ、タイトルの訳をどちらにするかは、別の話かもしれません」と留保したのは、ホームズの台詞の意図とタイトルの含意が完全に一致するか判然としなかったからです。 土屋さんに説得されて「習作」派に傾いていたのですが……。早急に答えを出さずに保留して、せめて『緋色の研究』(と便宜上言っておきますが)を読み終わるまで議論を続けましょう、まだ半分も読み終えていないわけですから。そのほうがオモシロそうですし(これが最も重要です)。ご覧の皆さんもタイトルの訳については、今後お好きなタイミングで発言して下さい。参考までに、これまでの議論をまとめると:

◆「研究」と訳す理由:
  ・冒頭の、血液を沈殿させる実験
  ・糸カセの譬
  ・ホームズという人物の「研究」
  ・ホームズの台詞の意図とタイトルの含意が完全に一致するとは限らない
◆「習作」と訳す理由:
  ・ホームズの台詞
  ・ホイッスラーの絵のタイトルからの連想
◆その他
  ・ダブル・ミーニングの可能性

以下、お蔵出しです。日本語訳は新潮文庫版(延原訳)に拠る:

小物あれこれ
◆「バロウド社製の金時計」の一例(A gold watch, [...] by Barraud, of London)
  ○Antique Pocket Watches - Gilt Pair Cased Duplex by Barraud - Pieces of Time
    http://www.antique-watch.com/des/w5906.html
◆「非常に太い片吊げの金鎖」の一例(Gold Albert chain, very heavy and solid)
  ○Pocket Watches - Gold Double Albert Pocket Watch Chain - Pieces of Time Status Page
    http://www.antique-watch.com/stat/w7456.html
 アルバート鎖
  ○アルバート鎖について―時計を持っている白兎の謎を解く
    http://homepage2.nifty.com/kobata/watch.htm
  このページによると、「鎖についたT字型の金具を、チョッキのボタンホールにくぐらせて
  留め」る鎖のことをアルバート鎖と言うそうです。「アルバートという鎖の呼び名は、ヴィ
  クトリア女王の夫君のアルバート公に因んでいる。アルバート公がこの鎖のついた時計を生
  前愛用していたことから、彼の死後(1861年12月没)、従来の首から下げる時計にと
  って代わり、人気になったようだ」とのこと。
◆共済組合模様の金指輪 (Gold ring, with masonic device)
  「共済組合模様」だと意味不明ですが、これはもちろん「フリーメイソンの紋様」のことで
  す。以下は、ホームズものにおけるフリーメイソンについての参考サイト:
  ○Masonic references in literature(英語)
    http://freemasonry.bcy.ca/fiction/doyle.html
  ○Sherlock Holmes and Jack The Ripper(英語)
    http://www.mastermason.com/callendar588/html/sherlock_and_ripper.html

ひと休み
◆ジン・ホット(a four of gin hot)
 "gin hot" と "hot gin" は同じなのか判りませんが……。これなら簡単につくれそう。
  ○Hot Gin recipe(英語)
    http://www.drinksmixer.com/drink6677.html

人名
◆ヌルマン・ネルーダ(Norman-Neruda)
ルマン-ネルーダ」じゃダメなんでしょうか?
 ○PABLO NERUDA, EL ENIGMA INAUGURAL ENRIQUE ROBERTSON AVAREZ
   http://www.cervantesvirtual.com/pneruda/Robertson.htm
  スペイン語でしょうか? 読めませんが書籍を電子化したもののようです。ページ内の
  fig. 10 がヌルマン・ネルーダ夫人のようです。
 ○Feminist Theory and Music 4: Abstracts(英語)
   http://wsrv.clas.virginia.edu/~smp8a/Abstracts/sess18.html
  学会発表か何かのアブストラクトのようですが、Paula Gillettという人の'Unsexing"
  the Violin: The Regendering of a Musical Instrument in Victorian England' の
  なかに Wilma Norman-Neruda についての記述があります。

おまけ
◆フォックス・ハウンド (foxhound)
 ○English Foxhound
   http://www.dogbreedinfo.com/englishfoxhound.htm

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第六章および第七章へ移ります。  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 6月10日(金)03時27分36秒
本日6月10日(金)より第六章および第七章へ移ります。恒例のまとめです。

新たな事件:ジョウゼフ・スタンガスンの殺害

新たな登場人物:
ウィギンズ(Wiggins)
浮浪少年。探偵局ベイカー街分隊(the Baker Street division of the detective police force)のリーダー。

アーサー・シャルパンティエ(Arthur Charpentier)
ドレッパ、スタンガスンの下宿先の女将の息子。グレッグスンによってドレッパ殺しの犯人として逮捕される。海軍士官。

ジェファスン・ホープ(Jefferson Hope)
馭者。そして……。

どのような話題でも結構です。どなたでもお気軽にご発言下さい。タイトルの訳についてもご意見をお待ちしています。

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ベイカー・ストリート・イレギュラーズ  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 6月10日(金)03時29分58秒
新潮文庫版(延原訳)でお読みの皆さんは「探偵局ベイカー街分隊」(the Baker Street division of the detective police force)という呼び名を見て、おなじみの "The Baker Street Irregulars"(「ベイカー・ストリート・イレギュラーズ」「ベイカー・ストリート不正規隊」など)ではないのか、と思いませんでしたか? そこで、ホームズのテクストを全文検索できる "Searching for Sherlock" で "the Baker Street Irregulars" を検索すると、"Total Matches: 1 for | the Baker Street Irregulars | " という、すこぶる意外な結果が得られました。検索条件を少し緩めて "Irregulars" のみで検索すると、"Total Matches: 3 for | Irregulars | "という結果でした:

 The Baker Street Irregulars                          Chapter 8 - The Sign of Four
 The Disappearance of Lady Frances Carfax   His Last Bow
 The Adventure of the Retired Colourman       The Casebook of Sherlock Holmes

しかし、"Irregulars" が "The Baker Street Irregulars" に関係して使用されている例は、結局『四つの署名』の第8章のみでした。

 つまり、"Searching for Sherlock"  による検索の結果、 "The Baker Street Irregulars"(「ベイカー・ストリート・イレギュラーズ」「ベイカー・ストリート不正規隊」など)という呼び名は『四つの署名』の第8章にしか登場しないということになります。

○Searching for Sherlock
  http://mrmoon.com/moonfind/holmes/index.mv?[RHomePage]

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ベイカー・ストリート・イレギュラーズ  投稿者: 土屋朋之  投稿日: 6月11日(土)09時58分36秒
これも我が長年の研究対象でありまして、自分なりの結論は出ています。イレギュラーズがあるからにはレギュラーズが当然ある訳でして、だとしたらそれは何か。ロンドン警視庁です。これが「正規の」捜査機関です。the Baker Street division of the detective police forceというのはまさにそのことを言い表していて、ホームズの組織は「ロンドン警視庁(the detective police force)の、ベーカー街分隊(部門)とでも言うべき存在」なのだと半ば冗談で言っているのでしょう。ホームズはこの呼び方が気に入って後に、the Baker Street Irregularsと「固有名詞」扱いにしていますね(BとSとIが大文字になっている)。「高名の依頼人」(だったと思います)にはthe Agent(探偵局?)なる組織が出てきますが、これも同じ組織の別名なのだと思います。決まった名前があるのではなく、ホームズの手となり足となり耳となる子供や大人たちを総称して、ホームズがその場その場で好きなように呼んでいるんだと思います。


Fifty Three さんへ   投稿者: 土屋朋之  投稿日: 6月11日(土)10時12分33秒
「ワトスンがホームズを「習作」したわけではありません。」とありましたが、これは完全な誤解ですよ。あるいは「習作」の意味を誤解されていらっしゃいます。ホームズは血まみれの殺人現場を目にしてそれを一幅の絵(「習作」≒スケッチ)に喩えたのです。だから「君がいなかったら惜しくもあんな(すばらしい)絵を見逃すところだったよ(君が一緒に行ってくれてよかった)。」と述べているのです。ホームズが画家の血を引いていること、暇なときには画廊を見て回ったりしていること、バスカービル館での肖像画に関する洞察などを考え合わせればホームズと絵画は容易に結びつきます。タイトルの問題は別にしても、冒頭近くの発言たるa study in scarletは間違いなく「習作」です。でなければa little art jargonの説明がつきません。


下宿屋の母子について・など  投稿者: Fifty Three  投稿日: 6月11日(土)12時19分3秒
大勢の人間がいろんな意見を言った方が面白いし、これまで判らなかったことが見えて来る。いきなり、断定的な口調で読書会に割り込んでしまいましたが(すみません!)、一つの話題にこだわるつもりは、さらさらありませんので、どうぞご安心を。

ところで下宿屋の切り盛りに苦労する女主人と、誤解されても健気に我慢する息子アーサーという、ホームズ物語に何度も登場する二人組が、《緋色》第6章で早くも姿を見せています(シェルパンティエ一家)。エジンバラのドイル家が下宿人を置いていたことが背景にあると研究者は言うのですが、こういう議論はお好きでしょうか?

P.S.研究/習作論争については、タイミングを見計らって、なぜタイトルを「研究」と訳した方がよいのか、根拠をずらずらと追加したいと思います。ともかく、遊び心を忘れずに楽しく行きましょう!


「大勢の人間がいろんな意見を言った方が面白い」  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 6月12日(日)13時19分49秒
土屋さん:
「ベイカー・ストリート・イレギュラーズ」については、私も土屋さんと同じ理解です。

 ただ、ホームズが、彼らをそのときの気分で恣意的な名前で呼んでいたことを、今回初めて意識しました。江戸川乱歩の作品では「少年探偵団」という呼び名が一貫して使われている(と思うのですが確認はしていません)のに対して、"the Baker Street Irregulars" という呼び名の使用頻度が異常に少ないことに意外な驚きを感じたという次第です。やはり、有名なシャーロッキアン団体の名称として使われていることと、なんといっても呼び易いという理由で "the Baker Street Irregulars" という呼び名が人口に膾炙しているのでしょうね。

Fifty Threeさん:
「大勢の人間がいろんな意見を言った方が面白いし、これまで判らなかったことが見えて来る」というのは、この読書会が目指すところでもあります。遠慮なさらずにご発言ください。例の「根拠」についても期待しております。

 下宿屋の話については、だから長男の名前が「アーサー」なのかと妙に感心しました。当時、ドイル家を知る人が読めば、「アーサーのやつ、こんなこと書いてやがる」と、作品自体とは別の愉しみがあったのかもしれません。

タイトルの訳について:
交通整理ばかりしているのもフェアーではないので、私の暫定的な立場を図にすると、目下のところ「※」の位置です。

(図)タイトルの訳についての現在の私の立場
   「研究」←       ※  →「習作」

 やはり "study" を「習作」の意味で使っているホームズ自身の台詞は無視できないと思います。しかし、タイトルの意味について英語のネイティヴ・スピーカーあいだでも意見が分かれているという点も考慮したいと思っています。よって私は「習作」寄りですが、未だ決めかねています。

ご覧の皆さん:
"study" 問題でも、それ以外の話題でも結構です。是非ご意見を。

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ACDの深層心理ほか  投稿者: 土屋朋之  投稿日: 6月12日(日)18時37分3秒
みんなで好きなことを節度を弁えて楽しく語り合いましょう。で、ACDの深層心理がホームズ物語に表れているという説には私は懐疑的なんですよねえ。アーサー(自分)とかメアリー(母親)とかが出て来て、母親と同名の登場人物が必ずしもハッピーにならないとしたら、たしかに母親に何か含むところがあるのかなあ、とは思ったりもするんですが。この辺りは正直言って良く分かりませんね。閑話休題。どの作品にも大抵当てはまると思うのですが、警察官とホームズの会話に注意してみてください。ホームズの方が威張った口を利いていませんか。警察官(レストラードなど。発音はレストレードよりこっちの方が正しいのでは?)はホームズの活動に不満気ではありますが、きちんとミスター・ホームズと呼んでいます。逆にホームズは相手を呼び捨てにはしていませんか。日本の探偵小説(明智小五郎シリーズなど)では「警察=お上」意識が強く、立場は警察の方が断然上ですが、イギリスでは素人に敬意を表する慣習があって、アマチュアたるホームズにプロたる警察官が敬語を使っているようです。ある面ではアマチュアの方がプロより優れているという考え方があって、イギリスでは作家や役者をスパイに仕立ててきた歴史もあるのです。


ホームズ物語の組み立て方について  投稿者: Fifty Three  投稿日: 6月13日(月)13時22分41秒
お言葉に甘えて3回目の書き込みを。話題を広げます。

《緋色の研究》では物語中盤、第7章末尾で犯人が逮捕されます。ホームズと犯人はこのときが初対面。この、ホームズと犯人が出会うとき=事件解決のとき、という組み立てがホームズ物語の基本形です。この形をドイルは最後まで崩しませんでした(もちろん、応用形や例外はありますが)。この事実は、覚えておいて損のないホームズ物語の特徴だと思います。

それはそうと、MasaruSさん、この読書会はネタバレOKでしょうか? OKにして下さると書き込みがしやすくなるのですが……。


「ネタバレ」について  投稿者: MasaruS  投稿日: 6月14日(火)12時49分10秒
取急ぎ、「ネタバレ」についてお答えします。

 原則的には「ネタバレあり」です。これを忌避すると、話題の範囲・議論の深度が著しく制限されてしまい、読書会の愉しみが半減すると思います。

 ただし、重要なことですが、読書会の進行状況を考慮して頂きたいと思います。この読書会では、ひとつの作品をいくつかに分けて事件発生順に読み進めていますので、現在読んでいる作品の結末を事前にバラしてしまったり、未読の作品の結末を先に明かしてしまったりはなさらないほうがよいと思います。

 具体的に言えば、次のような感じです:現在は『緋色の研究』の第1部第7章まで読み進めています。従って、第2部の内容で作品の核心にかかわる箇所について先取りすることは推奨しません。また、例えば今の段階で『四つの署名』の結末を明かしたりはなさらないほうがよいでしょう。

 個別具体的な判断は、書き込みするご本人にお任せします。適切なタイミングを図って書き込んで下さい。ネタバレを含んでいるかもしれないことを予め明示して頂くのも、ひとつの方法かもしれません。

 個人的には、参加者/閲覧者の今後の読書意欲を削がない範囲で、ご自由に書き込んで頂きたいと思います。これに尽きます。

「ネタバレ」をどう扱うかについて何かご意見がある方は、是非ご発言下さい。

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