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オン・ライン読書会「シャーロック・ホームズを読む」の過去ログ
馬車男


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オン・ライン読書会の『緋色の研究』の過去ログの1ページ目です。 2ページ目はここ。 3ページ目はここ。 4ページ目はここ。

『緋色の研究』が始まります。  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 5月13日(金)03時34分26秒
遅くなりました。恒例のまとめです。

『緋色の研究』
A Study in Scarlet
依頼主:第三章で明らかに。
依頼内容:第三章で明らかに
事件発生年月日:1881年3月4日
発表年:1887年(Beaton's Christmas Annual, 1887)
登場人物:
シャーロック・ホームズ(Sherlock Holmes)
聖バーソロミュー病院の化学研究室にいる男。世界で唯一の諮問探偵。ルーム・メイトを探していたところ、ワトスンと出逢う。

ジョン・H・ワトスン(Dr. Johon H. Watson)
アフガニスタンからの復員傷痍軍医。ロンドンでの徒然なる暮らしの最中、ホームズと出逢う。

スタンフォード(Stamford)
聖バーソロミュー病院でワトスンの助手を務めていた青年。ホームズとワトスンを引き合わせる。

レストレイド(Lestrade)
スコットランド・ヤードの刑事。

進行の確認
以下のように区切り、それぞれを2週間づつで読み進めることにしましょう:

 第一部
  1 2/3 4 5/6 7
 第二部
  1 2/3 4 5/6 7

どなたでも、どこからでもご参加頂けます。ご感想・ご意見や「この台詞が気に入った」など、なんでもご自由にお書き込みください。些細な話題でも結構です。『緋色の研究』は話題が色いろありそうで、愉しみです。

http://homepage2.nifty.com/MasaruS/Hound/

編集済


想いついた事など。  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 5月13日(金)03時47分27秒
以下、想いついた事など。日本語訳は 新潮文庫版(延原訳)に拠る。

情報
「第五ノーザンバランド・フジリーヤ連隊」
 ○The Royal Northumberland Fusiliers(英語)
   http://www.regiments.org/regiments/uk/inf/005RNF.htm

「マイワンドの大苦戦」
 ○マイワンドの戦い
    http://ww1.m78.com/topix-2/secondafganwar%20maiwand.html

「ジェゼール弾」は 英語では "a Jezail bullet"。カートリッジや弾丸の名前ではなく、「ジェゼールの弾」という意味かもしれない(自信無し)。ジェゼールとはライフルの名前。「アフガンのマスケット銃、ジェゼールは、80ヤードの最長有効射程距離、2分に1回の発火率」(CAC - Military Review より)とのこと。
 ○Jezail (AAA2546) - National Maritime Museum(英語)
   http://www.nmm.ac.uk/collections/explore/object.cfm?ID=AAA2546
 ○CAC - Military Review(英語)
   http://www.leavenworth.army.mil/milrev/English/MayJun01/jal.htm

「残忍きわまる回教徒(ガージー)」は 英語では "the murderous Ghazis" 。日本語に音訳すれば「ガージス」か? ブリタニカのオンライン版の "Ottoman Empire" の項に、「ガージスとして知られる、イスラムの信仰のために闘うトルコの戦士」とある。
 ○Ottoman Empire Encyclopedia Britannica(英語)
   http://www.britannica.com/eb/article?tocId=44375
 ○Ghazis(英語。模型の画像あり)
   http://www.fortunecity.com/underworld/straif/69/engghazga.htm

ワトスンが乗って帰って来た、「運送船オロンティーズ号」(the troopship Orontes)の写真は、次のサイトでご覧になれます。"SS" は "steamship" の略だと思います、たぶん。
 ○SS Orontes(英語)
    http://ozhoo.net.au/~strathsisters/orontes/

気に入ったところ
「[……]たとえば解剖室の死体を棒でたたいてまわるといったようなことにでもなると、穏やかじゃありませんよ。」
なんか、モンティ・パイソン風の奇行です。想像するとけっこう可笑しい。

話題
ホームズとワトスンの会話に出てくる『モルグ街の殺人』は読んだ事があリましたが、ガボリオウ(Etienne Emile Gaboriau)は読んだ事がありません(じーじょさんのサイトで言及されていたのを読んだことはあります)。どなたか読んだ事のある方はいらっしゃいませんか?
 ○ミステリの歴史、各時期とその特徴(THE STUDY ROOM FOR DETECTIVE STORIES──推理研究室)
   http://www5b.biglobe.ne.jp/~detect/study/34.html

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編集済


はじめまして  投稿者: 時計未来  投稿日: 5月14日(土)08時08分7秒
 「緋色の研究」と言うことでしたので一言。
「アフガニスタンに行っておられましたね」まさしく、この一言が私とホームズとの出会いでした。
 子供向けの本で、その出会いのエピソードだけが序章のように入っているもので、小学校3年の終わり間近だったと思います。
 「緋色の研究」自体を読んだのはそれから4年後くらいのことで、こう言ってはなんですが、あまり面白みを感じなかったように思います。短編のスピード感(?)が好きなのでしょう。
 ワトスンが書き留めた、ホームズの成績表(?)はお気に入りですが…。

http://homepage2.nifty.com/shworld/16_yaneura/yaneura.html


お越し頂きありがとうございます。  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 5月15日(日)22時37分39秒
時計未来さん:
お越し頂きありがとうございます。「ホームズの屋根裏部屋」、拝読しています。

『緋色の研究』を読んで「アフガニスタンかぁ……」と思ってしまうのは私だけではないはずです。「アフガニスタンに行っておられましたね」が出逢いの言葉のミステリーがもし今出版されたら、どんな内容になるのでしょうか?

さて、正直なところ、私も、概して「短編のスピード感」(妙言ですね)が好きで、小学生の私にとって『緋色の研究』はイマイチでした(特に第二部)。しかし、今回は第二部が愉しみです。当時のイギリスからアメリカを見るときに喚起される想像力が、どのように表現されているのか興味深いです。ただ、20-21世紀の日本で読む場合には、作品と共鳴する同時代的なコンテクストを肌で感じられない(ひと昔前に流行ったアニメ風に言えば「作品とのシンクロ率を上げられない」)のが残念です。

自分の目的に関係ある知識しか重視しないホームズに対して、知識一般の重要性を説いたであろうワトスンが、「そんなくだらないことは早くよしたほうがいい」と「ホームズの成績表」(ある意味、目的のない知識の極み)を火中に投じてしまう、というのがチョット可笑しく思いました。ちなみに、ホームズがシャーロッキアン(目的のない知識の蒐集家の極み)を見たら、「そんなものがなんになるものか!」と言うに違いありません。かつて、教育テレビの番組でシャーロッキアンに対してケント・ギルバートが同じことを言っていたような……。

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長編もの  投稿者: ZERO  投稿日: 5月17日(火)13時11分46秒
こんにちは、ご無沙汰しております。
掲示板は時間がなくしかも何か書く事が面倒で毎度拝見しているばかりでした。
たまには書き込みしたいです。

長編になりましたが、最近は読んでも第1章までが多く、最後まで読んだのはかなり昔になります。
恐らく短編のように話がサクッと終わる方が楽に楽しめるからでしょう。
今回を機に再度読もうと思います。

さて、何と言っても
"「アフガニスタンに行っておられましたね。」「なぜお分かりになられましたか。」「いや、なんでもないです」"
のやり取りが好きですね。ここだけは何度も読み返してしまいます。(笑)
あとは、元海兵隊上がりの郵便配達屋。ワトスンがわざわざ元職業を聞きますがホームズの推理通りで面食らう場面も好きです。
ん~、さすが!と。


緋色の研究ですね  投稿者: KUKU  投稿日: 5月18日(水)00時04分20秒
こんばんは。最近ちょっと体調不良に陥りまして、なかなか読めずにいますが、みなさんの書き込みをみて、早く読みたくてウズウズしております。私の場合、かなり昔に読んだきりなので、ほとんどの作品について記憶が薄れてしまってます(涙)なので、「緋色の研究」も初めて読む気持ちです(←こんなんでホームズ好きって言えるのでしょうか・・・)。この「緋色の研究」はホームズとワトスンの“出会い”の作品ですねー 早く読みたいです。
ではまた~


実はミステリー・ファン?  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 5月20日(金)21時21分34秒
ZEROさん:
それにしても、「いや、なんでもないです」ってことはないだろう、とツッコミを入れたくなります。出逢ってから、アフガニスタンに行っていたのが判った理由を教えてもらえるまでに、「いっしょになって最初の一週間ばかり、お客がひとりもなかった」という記述があるので、ワトスンは随分おあずけを食らっていたことになりますね。

出逢いの場面もそうですが、私は、研究室でのホームズの変人ぶりが結構気に入っています。ただ、『緋色の研究』自体は、作品として人気がないのでしょうか……と言いつつ、私も特に好きな作品ではなかった訳ですが。

KUKUさん:
実は、私もここ最近多忙でしばらく掲示板を見ていなかったので、レスが遅れました。

私も『緋色の研究』は新たに読み直す感覚で臨んでいます。長編でも『バスカヴィル家の犬』は結構ちゃんと憶えているので、『緋色の研究』はインパクトが薄い作品なのでしょう。出逢いの場面のインパクトに作品全体が負けてしまっているのでしょうか?

何はともあれ、体調にはお気を付けください。お大事に。

ところで:
どうでもいいことですが、デュパンとルコックという「好きな人物をふたりまで、こう無遠慮にやられたので、いささか憤慨した」と言うワトスンは、結構ミステリー・ファンなんでしょうか?

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(無題)  投稿者: otowa  投稿日: 5月21日(土)09時24分18秒
そうですね。私も後半をほとんど覚えていません。長編だと「緋色」よりも「署名」の方が好み……。
私は、ワトスンの私情を交えた(←これ重要/笑)視点でとらえたホームズを知るのが大きな喜びだったりします。その点でこの前半は楽しくて仕方ありません。
成績表もかなりの辛口になっていますが、時を重ねたあとにはきっと違う評価が下されるようになるのではと思います。

彼らが出会う前、「ぼくは、・・・・・勉強家で、しずかに暮らしている人がいい。・・・・・騒々しい刺激のつよい生活には、たえられないんだ。」というワトスンのセリフに、いつも吹き出してしまいます。
スタンフォードの「あなたが彼を知る前に、彼があなたのすべてをつかむだろう」という言葉も印象的で気に入っています。

ついでの件ですが。
「ロンドンへ出たてのころ、ぼくはモンタギュ街の、――――そこで仕事を待っていた。」という所やそのあたりの説明からは、仕事を始めるためにロンドンへ出てきた、つまりそれまではロンドンにいなかったのではという具合に考えてしまいます。学校の宿舎に篭りきりで、街中に出ることがなかったのだと言われれば、それもそうかなぁと思ってしまうホームズの行動にちょっと黄昏るこの頃…(笑)


お互いに辛口。  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 5月24日(火)00時03分53秒
otowa さん:
今回は『緋色の研究』ですが、私は実は、カン違いして『四つの署名』のほうをかなり読み進めてしまっていました。『緋色の研究』のオープニングも印象的ですが、『四つの署名』のオープニングもナカナカ衝撃的です。

『緋色の研究』の出だしの、ワトスンによるホームズ批評はイイですね。もちろん、読者にホームズを紹介する意味が大きいのだと思いますが、それ自体が結構オモシロい。例えば、ホームズが書いた雑誌記事「救われるものの名簿」対して「たわごと」扱いするあたりとか。ちなみに、『四つの署名』では、ホームズが『緋色の研究』を「あんまり褒められた出来じゃない」と評しています。メタフクション的とまでは言えないかもしれませんが、こういう自己言及的な作品は、当時の読者にどのような印象を与えたのか興味があります。

ちょっとしたネタですが:
新潮文庫版(延原訳)の「レトルト、ピペット、青い炎のちろちろするブンセン灯」は、英語では "retorts, test-tubes, and little Bunsen lamps"。「ピペット」は誤訳。「ブンセン灯」は、学校の理科室にあった、いわゆる「ガス・バーナー」のことのようです。「蒸留器、試験管、小さなガス・バーナー」などと訳して頂いたほうが、解り易いような気がします。

「グアヤコール・チンキ試験」("The old guaiacum test")は、最近では新米/古米の判定に使われているようです。

当読書会は、新規参入を熱烈に歓迎いたします。お気軽にご参加ください。

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『緋色の研究』の話題ではないのですが……。  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 5月24日(火)00時12分11秒
otowa さんをはじめ皆さんへ:
主催者みずからルールを逸脱してしまうのは非常に忍びないのですが、オモシロそうだということでご勘弁下さい。「ついでの件」=「下宿」問題について、実は私は頭を悩ませていたのです。

「グロリア・スコット号」によると、

新潮文庫版(延原訳)
僕はロンドンの下宿へ帰ってから、有機化学のちょっとした実験をやって七週間をすごした。

英語版
I went up to my London rooms, where I spent seven weeks working out a few experiments in organic chemistry.


ということで、ホームズは学生時代に既にロンドンに下宿していたことになるのですが、otowa さんがご指摘の「マスグレイヴ家の儀式」の記述では、

新潮文庫版(延原訳)
最初ロンドンへ出てきた時はモンタギュー街の、大英博物館の角を曲がったところに間借りして、おそろしく退屈な時間を、将来役にたちそうな学問をうんと手びろく勉強して潰していたものだ。

英語版
When I first came up to London I had rooms in Montague Street, just around the corner from the British Museum, and I waited, filling in my too abundant leisure time by studying all those branches of science which might make me more efficient.


となっており、otowa さんがおっしゃるように、「仕事を始めるためにロンドンへ出てきた、つまりそれまではロンドンにいなかった」と考えることができます。とすると、ふたつの記述は齟齬を来してしまいます。

「下宿」に関するこれらふたつの記述を、齟齬を来さないように解釈すると:

大学時代には、ロンドンにも一時的に部屋を借りたりしていたが、本拠地はロンドンではなかった。つまり、"my London rooms" の他にも、例えば "my Oxford rooms" か "my Cambridge rooms" などの本拠地があった。後に開業のためにモンタギュー街に部屋を借りロンドンへ初めて出てきた。

と言えなくもないですが、何かヘンです。単なるドイルの、もといワトスンの記述ミスかもしれません。『緋色の研究』の話題ではないのですが、オモシロそうなので、ご意見をおもちの方は是非ひとこと書き込みをお願いします。

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編集済


緋色の研究と言えば…  投稿者: みき。  投稿日: 5月25日(水)23時59分13秒
はじめまして、いつも楽しく拝見しています。

緋色の研究と言えば…
アフガニスタンや、死体を棒で叩くことも印象的ですが、
個人的には、ワトスンの「ブルドックの仔」はどこに行ってしまったかが気になります。
試薬の犬はテリアですしね…

ちなみに、私の持っている「緋色の研究」は、
阿部知二訳の創元推理文庫(1960年初版1966年5版)で、
今にもページが抜けそうなものです…

http://miki-mar.hp.infoseek.co.jp/sh/index.html


私は小さな雑種の仔を一匹飼っていました。  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 5月27日(金)00時50分44秒
みき。さん:
ようこそお越し下さいました。お久しぶりです。

 ご指摘を受けてページをめくると、その箇所に線を引いていました。新潮文庫版(延原訳)では「私も小さなブルドックの仔を一匹飼っています。」、英語では "I keep a bull pup." です。試薬のテリアはかわいそうな気もしますが、ワトスンは、これとは別のブルドッグを飼っていたのでしょうか? 余程の老犬ならまだしも、仔犬なので当分生きているはずですが……確かに不思議ですね。

この掲示板をご覧のみなさんも、みき。さんのサイトを是非ご訪問下さい。入り口に愉しい仕掛けがありますよ。
 ○North by ten and by ten
   http://miki-mar.hp.infoseek.co.jp/sh/index.html

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今日から、第三章、第四章および第五章です。  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 5月27日(金)01時00分2秒
本日5月 27(金)から『緋色の研究』第一部の第三章、第四章および第五章に移ります。

新たに判った事実:
依頼主:トバイアス・グレッグスン警部
依頼内容:ロウリストン・ガーデンズ3番地(3, Lauriston Gardens)の空き家で発見されたイーノック・J・ドレッパの変死対に関する事件の解決

新たな登場人物:
トバイアス・グレッグスン警部(Tobias Gregson)
スコットランド・ヤードの警部。ホームズによると、「スコットランド・ヤードで最もキレる」。背が高く、亜麻色の髪の、色白の男。

レストレイド刑事(Lestrade)
スコットランド・ヤードの刑事。ホームズによると、グレッグスンとレストレイドは「掃溜の中の鶴」。痩身で、イタチのようにちょこちょこした、小柄の男。

イーノック・J・ドレッパ(Enoch J. Drebber)
ロウリストン・ガーデンズ3番地の空き家で発見された変死体。クリーヴランド出身。

ジョウゼフ・スタンガスン(Joseph Stangerson)
ドレッパの変死体のポケットから見つかった2通の手紙のうちのひとつの宛先の人物。

ジョン・ランス巡査(John Rance)
ドレッパの変死体の第一発見者。ケニントン区パーク・ゲイト、オードリー・コート46番地(46, Audley Cout, Kennington Park Gate)に住んでいる。

「ソウヤー」と名乗る老婆("Sawyer")
ホームズがワトスンの名で出した新聞広告をみて指輪を引取りに来た老婆(?)。

感想・解釈・意見など、気軽にお書き込み下さい。第一章および第二章に関しても、言い残したことなどがあれば書き込んで頂いても構いません。

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タイトルをどう訳すか?  投稿者: 管理人 MasaruS  投稿日: 5月27日(金)02時33分51秒
すっかり夜も更けております。

「ドレッパ」について:
変死体として見つかったドレッパの名前についてですが、英語の "Drebber" を素直に読めば「ドレッー」[dorebba]だとおもいますが、どうして「ドレッ」[doreppa]と音訳しているのでしょうか? 皆さんの版ではどうですか?

タイトルについて:
タイトルの A Study in Scarlet の訳については、『緋色の研究』ではなく『緋色の習作』が良いとする説がありますが、どっちが良いのでしょうか? 

 今回読む部分に、初めて "a study in scarlet" という言葉が登場します。この部分がお好きな方も多いのではないでしょうか?

新潮文庫版(延原訳)
[……]君がいなかったら、僕は行かなかったかもしれない。したがって生まれてはじめてというこのおもしろい事件を、むなしく逸したかもしれないんだからね。緋色の研究というやつをねえ。
 少しは芸術的な表現をつかったっていいだろう? 人生という無色の糸カセ[※木偏に「上」「下」。「峠」の山偏を木偏に換えた字]には、殺人というまっ赤な糸がまざって巻きこまれている。それを解きほぐして分離し、端から端まで一寸きざみに明るみへさらけだして見せるのが、僕らの任務なんだね。
 [……]

英語版
[...] I must thank you for it all. I might not have gone but for you, and so have missed the finest study I ever came across: a study in scarlet, eh?  Why shouldn't we use a little art jargon.  There's the scarlet thread of murder running through the colourless skein of life, and our duty is to unravel it, and isolate it, and expose every inch of it.  [...]

 私としては、引用した箇所の " a study in scarlet" は、"Why shouldn't we use a little art jargon." から判断して、「習作」だと思います。延原訳は、段落の切り方から判断すると、"a little art jargon" が、直前の " a study in scarlet" でなく、直後の糸カセの譬の部分と読み取っているように見えます。糸カセの譬の内容そのものは「習作」というより「研究」と呼べるような気もします。

 ただ、タイトルの訳をどちらにするかは、別の話かもしれません。

タイトルについてご意見をおもちの方はお書き込みください。

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編集済


タイトルをどう訳すか?  投稿者: 土屋朋之  投稿日: 5月28日(土)14時22分20秒
私が言い出したことなので、私が発言せねばならないでしょう。この「研究」という題には小学生の頃からずっと引っかかっていたんです。「習作」なんだ!と思ったきっかけはSH全集の注釈部分とスターレットの「SHの私生活」です。両方とも明らかにこの作品の題名が絵画だということを前提にして書かれていました。そこで絵画領域にとんと疎い私はJSHCの美術の専門家である岡部幸彦さんに参考意見を求めました。その結果、「習作」で間違いない、という結論に至り、例会で発表したのです。正直言ってもっと盛り上がるかな、と思ったのですが、殆ど無視され、あるいは「論外」と思われたのでしょうか、あまり話題になりませんでした。好意的に受け止めてくださったのは小林・東山両先生と田中喜芳さんでした。田中さんは世界のシャーロキアンにアンケートまで実施してくださり、驚いたことにイングリッシュネイティヴスピーカーの中でも、「研究」派と「習作」派がいることが判りました。田中さんの私見では、レヴェルの高いシャーロ路キアンほど「習作」を採用しているとのことでした。テキスト上の前後関係から解釈すれば「習作」に間違いありません。管理人さんから「"a little art jargon" が、直前の " a study in scarlet" でなく、直後の糸カセの譬の部分と読み取っているように見えます。」とのご指摘がありましたが、「ちょっとした美術の専門用語を使っても構わないだろう」と言う発言の前に厳然たる美術の専門用語たる「習作」があるのですから、延原さんが発言の後半と結び付けたとすれば、強引過ぎると思います。さすがの延原さんもstudyにそんな意味があることをご存じなかったのだと思います。受験生は、study=「研究」のほかに「書斎」なんて意味があることを知って驚いたりしますが、「習作」までは覚えないのではありませんか。「ただ、タイトルの訳をどちらにするかは、別の話かもしれません。」たしかにそうですね。研究と習作のダブルミーニングではないと証明する手段を私は持ちません。だから新潮社が、歴史もあり長く使用してきた「研究」を採り続けても仕方のないことだと思います。ドイルの霊を呼び出して質問するしかなさそうです。


タイトルをどう訳すか?(書き漏れ)  投稿者: 土屋朋之  投稿日: 5月28日(土)14時37分10秒
"Just one more thing"。A Study in XX(XXの部分には色を表す単語が入る)という一連の作品で有名なアメリカの画家が当時イギリスに住んでいてその作品も話題になっていたので、ある程度のインテリが読めば、A Study in Scarletが、その「もじり」であることが分かったのではないでしょうか。映画ではミスター・ビーンがこの画家が母親を描いた作品の護衛を命じられてドタバタしていましたっけ。


タイトルをどう訳すか?(再びの書き漏れ)  投稿者: 土屋朋之  投稿日: 5月28日(土)14時38分36秒
画家の名前はホイッスラーでした。


はじめまして  投稿者: ヤジョウ  投稿日: 5月28日(土)17時47分41秒
ワトスンが飼っていたというブルドックの仔犬に関しての、みき。さんや管理人さんの書き込みについて、私が聞いたことのある説をひとつ書かせていただこうと思います~。

I keep a bull pup…
当時インド駐在のイギリス人の間で流行った言い方で、「私はブルドックの仔犬を飼っている」=「私はちょっとした癇癪もちです」…という意味で用いられたという話を聞いたことがあります。(出典がはっきりしなくて申し訳ないのですが…)
なので、実際に仔犬を飼っていたというわけではないようですね。
ホームズとワトスンがルームシェアにあたって自分はあぁでこうで…と話している中で、ワトスンらしい自己紹介・謙遜(?)だなぁと私は感じました。
それに、ブルドックの成犬ではなく仔犬なところが、ほんとうに「可愛い癇癪」という感じがしてワトスンらしく、好感が持てるので…この説を支持しています。


I keep a bull pup.  投稿者: 土屋朋之  投稿日: 5月28日(土)19時41分27秒
トレイシーのホームズ事典でも「癇癪もち」という解釈をしていたと思いますよ。ブルドッグの子犬がその後でてきませんからね。俗語と解釈した方が自然です。


タイトルをどう訳すか?(訂正)  投稿者: 土屋朋之  投稿日: 5月29日(日)11時21分32秒
岡部幸彦さんでなく岡部昌幸さんでした。訂正してお詫びいたします。


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